味のないガム。
砂をかむような毎日。
たばこ――ロングピースを吸い、空を見上げる。
今日の空は青色だなあ。今日の空は灰色だなあ。
そんなことを考える日々だ。
喫茶店へ行くことをやめた。道端に咲く花に無関心になった。
鬱ではない。毎日シャワーを浴びて、1週間に3回就労継続支援B型作業所に通所している。
ところで、最近物思いにふける時間が増えた。
「働いて、私はどうしたいのだろう」
「生きている。だから、何かをしているだけなんだ。死ねば、全てが終わる」
――死ぬこと。
私は死を恐れていない。
その気になれば、線路に飛び込むことも高層階から飛び降りることもできる。
何にも期待していない。人生山あり谷あり? ああそうですか、勝手にどうぞ。
障害者というスティグマを背負い、私は生きてゆく。
「死にたい」
死んだら周りが悲しむ。
たったそれだけの理由で生きなければならないのだ。
「子供が欲しい」という両親のエゴで生まれた私。
私は両親が大好きだが、大嫌いだ。
人を責めない! 人を憎まない! そうして、笑顔を絶やさない!
生まれてこなければ、自分にこのような義務を課さずに済んだ――……済んだのに。
私はなぜ生きるのだろうか? 素晴らしいこと、いいことなんて何もないこの世界で。
買い物をする。遠出をする。ああ、楽しかったなあ。
けれども、しばらくして、私を襲う虚無感。
つまるところ何もない。
――私は思う。
愛があれば、幸せだったと。
私は愛されたい――否、私は愛されたかった。
自分本位な人ばかりだ。家族も例外ではない。家族は私に無関心だ。
「家族」
私は家族が何か分からない。
私は2階の自室に閉じこもって、本を読む。
祖父母と母親は1階のリビングでテレビ番組を視聴する。
彼らは私に話しかけない。そう、私に無関心なのだ。
私が例えば自殺する。彼らは悲しむだろう。が、私が自殺に至った理由はもちろん分からない。
死にたいなあ。
そう思いながら、私は今日も空を見上げる。
今日の空は灰色。
たばこの煙を吐き出し、そぼ降る雨を見つめた。